彼らの2年ぶりのライブに行ってきた。いや、とても実験的で、さまざまな仕掛けが随所に施された、極上の「エンターテインメントショー」だった。本物の役者も登場し、演奏中に生演技をし、その様子がバンドメンバーとともに2枚の大型スクリーンに映し出され続けていた。まさにMVの生撮影である。
さらに会場内では、何かしらの音が途切れることなくずっと鳴っていた感覚があった。全く異なる曲と曲の繋ぎ目をほぼ感じることなく、滑らかかつシームレスに演奏を続けていた。この領域までくればもはや演奏というよりいち表現に近い。芸術作品のような奥ゆかしさがある。音楽が途切れないため、我々観客は常にビートを刻みながら、どんな音楽にもすぐ没入体験できるという訳である。
そしてライブ終盤、ボーカルの彼は噛みしめるように、象徴的にこう述べた。
(大事な部分は)変わらないまま、変わっていく。
コロナでの空白期間はあれど、彼らの核はまったく変わってない。むしろコロナが変えてくれた部分もあろう。活動15年目の彼らによる、15年前に作ったという楽曲演奏には心震えるものがあった。サブスクの発達により、古い曲も新しい曲として認知されうる時代。
だかしかしやはり、対面ライブはサブスクや今流行りのオンラインライブよりも情報量が段違いである。視覚、聴覚、触覚等すべての五感で感じ取れるものこそ対面ライブの醍醐味である。
今回の2年ぶりライブのタイトルは「アダプト(Adapt)」=適応するという意味だ。そして次のライブタイトルは「アプライ(Apply)」(=応用する)であることが発表された。
新しい環境への「適応」から「応用」へ。今宵は彼らの新時代の幕開けを見るようであった。今後も、時代を象徴する彼らサカナクションの動向から目が離せない。