書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

自己啓発本はなぜ気持ちいいか

 

自己啓発本を読了したあと、夢見心地に浸れるのは何故だろう。そもそも自己啓発本を出版する著者という存在自体がすでに奇跡といえる希少種であり、つまりほとんど、自己啓発本というのは成功者が執筆したものといえる。そんな彼・彼女らの純然たる成功体験を我々読者は脳へノーコスト輸送しているだけなのだ。つまりただのドーピング。明確な副作用も無いためことさら厄介である。現実において、他人の自慢話というものは基本的に退屈でつまらないものだ。しかしそうかと思えば人というのは、ときに多額を支払ってでも尊敬する人物の講演を聞きに行ったりする。ほんとうに不思議な生き物だ。自己啓発本を読むというのは、身銭を切っているから自分の意志ということになる。聞きたいことだけ聞いているだけ。やはり我々は一切苦労をしない。だから、(他人の偉業であるにも関わらず)「達成感」という正の感情だけが残る。そのため、自己啓発本は気持ちいいのである。購入前に「わたし生まれ変われるかも?」と期待し、読了後は「すぐには生まれ変われなかった」という一見負の結果でさえも、人間の脳にはバチバチに刺さっているのだ。ガチャ競馬パチンコ、もう少しもう少しあと一回あと一回、自分はこれを読み今度こそ変われるはずだ…と。自己啓発本商法は人間の深層心理につけ込んだうまい商売なのである。何より恐ろしいのは、こんなことをツラツラ書いている私がそもそも自己啓発本中毒者であるということだ。