書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

稼働率99.99%のセブン銀行のからくり

 

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 今日読んだ新刊本があまりにも興味深く、居ても立ってもいられなくなりましたので、皆さんと共有したくなりました。よろしくお願いします。

 今回は大学院教授が執筆された厳格な書籍になるので、いつものボケ少なめマジメ記事にします。ただ、本記事はふつうに読まれると15分はかかると思いますので、これからお風呂に入られるという方はそちら優先でお願いいたします。

 

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 2月10日発売の宮永博史(東京理科大学大学院教授)著「ダントツ企業 超高収益を生む、7つの物語」より。

 ✱本記事のセブン銀行、その他専門的な情報はすべて、本書の出典となる。

 

 

 

 

 

セブン&アイの事業別業績

 今やコンビニエンスストアにATMがあるのは当たり前の景色となっている。この「どこにでもあるATM」に、意外と知られていない巧みなビジネスモデルが隠れている。

 代表格がセブン銀行だ。小売の世界から金融の世界へ、規制の壁を乗り越え、常識外のビジネスモデルを構想し、実現してきた。しかも、今でも進化を続けている。

具体的に数字で見ていこう。

 

セブン&アイホールディングスのもつ数ある事業の中で、今回は下記二事業のみ紹介させていただく。

いずれも数字は営業利益・営業利益率の順としている。(2017年2月期)

 

コンビニエンスストア事業

→最多3,132億円・12.3%

 

金融関連事業

→501億円・24.8%

 

 上記のように金融関連事業の利益率は、セブンイレブンでさえ抜き去っている。ただ本事業のすべてがセブン銀行というわけではない。他にクレジットカード、電子マネーnanacoなどが含まれる。

 

 

セブンイレブンをしのぐ40倍の超高収益事業

  上記の数字をみても営業利益において、セブン銀行はセブンイレブンとは桁違いで突き放されている。しかし単位床面積あたりで稼いでいる利益を比較するとどうであろう。

 ATM 1台が占める面積は、わずか幅45センチメートル・奥行き60センチメートルだ。セブンイレブンの平均的な床面積はおおよそ100平方メートル程度であるから、ATM 1台が占める床面積の400倍ほどだ。

 利益の絶対額の違いは10倍程度なので、単位床面積あたりで比較すると、セブン銀行の利益はセブンイレブンの40倍と極めて高収益であることがわかる。

 もちろん、その高収益性はセブンイレブンの中にあればこその結果である。しかし、そこにセブン銀行の巧みさが隠されている。他の企業にとっても、新規事業を成功させるうえで学ぶべき点がある。それをふまえてこれからの項を読み進めていただきたい

 

 

銀行は「融資」で稼ぐ 

 セブン銀行の前に、まずは普通の銀行がどのようなビジネスモデルなのかをおさらいしておこう。

 あえて単純化すれば、「銀行のビジネス」は「預金者」からお金を集め、集めた資金を企業や個人などの「融資先」に貸し出し、その「利子」を得ることで成り立っている。

 つまり「銀行のビジネス」にとってのお客様は、「預金者」でなく「融資先」であり、そこから得る「利子」が企業でいう売上に相当する。また、「預金者」は資金を提供する供給者であって、「利息」という形で、提供した資金に対するリターンを得ている。

 一方で、セブン銀行のビジネスモデルはまったく異なる。まず銀行業の根幹ともいうべき「融資」というものをしないのだ。「預金者」から資金を集めないし、店舗もない。つまり、従来の銀行のビジネスモデルを真っ向から否定しているようなものだ。

 

 

セブン銀行のシンプルなビジネスモデル

 ではセブン銀行はどうやって収益を上げているのか。実は、ATMの利用料で稼ぐシンプルなビジネスモデルである。しかも利用者が手数料を支払うのではなく、600以上ある提携金融機関が手数料を支払うというのがミソだ。

 たとえば、セブン銀行の提携先にA銀行があるとする。A銀行に口座を持つ顧客は、普通はA銀行の支店に出向いてお金を出し入れするだろう。それとまったく同じように、顧客はセブン銀行のATMを使ってA銀行の口座からお金を出し入れできる。つまり、セブン銀行のATMは、この利用者にとってはA銀行のATMとして機能するのである。これはB銀行でも、C信金でも同じだ。

  では、金融機関がお金を払ってまでセブン銀行のATMと連携するのはなぜか。もちろん、自分たちでATMを設置することはできるだろう。しかし、自らATMを設置するには、それなりのコストがかかる。セブン銀行のATMと連携して、顧客が利用したときだけ手数料を支払うほうが、金融機関にとってもはるかに安上がりだ。

 全国に約2万店あるセブンイレブンのATMが使えるようになれば、顧客の利便性は一気に高まる。金融機関にとっても、セブン銀行はありがたいサービスなのである。

 

最終項: ATM稼働率99.99%の裏側

 本タイトルにもなっている、私が個人的に最も衝撃を受けた内容について引用する。

 セブンイレブンの単品管理はよく知られているが、セブン銀行でもその方針は守られている。ATMの出金に使用される紙幣は1万円札と千円札だ。これが、店舗の立地に応じて微妙にコントロールされている。たとえば大学近くのセブンイレブンでは、千円札の割合を多くし、オフィス街や飲み屋街の近くでは、1万円札を多めに保有する。

 セブン銀行が最も恐れるのは、お金を引き出しに来たのにATMに現金がないという状態だ。セブン銀行も、セブンイレブンと同様に、ATMが現金不足を起こさないことを重要な経営課題にしている。こうして、ATMの故障や現金の欠品も含め、「稼働率99.99%」と銀行関係者も信じられないような高い水準を維持している。

 

 

写経後のような清々しさ

 いかがだっただろうか。著者の例示や説明がもともと非常にコンパクトでわかりやすかったため、つい甘えてしまい、抜粋させていただいた。

 それもこれも、私が本書を通して、セブン銀行のビジネスモデルに大変な感銘を受けたがためである。フリック入力の限界を感じることなく、勉強になった部分すべて記入させていただいた。ご容赦いただきたい

 もし、読者の皆様で分かりにくいところがあればお詫び申し上げる。

  ちなみに本書の副題にもなっている「7つの物語」という部分。これは取り上げられた企業の数を表している。セブン銀行は7つあるうちの1つということだ。残り6社はまだ読んでいないのだが、面白く親しみやすそうであれば、本ブログで取り上げさせていただくつもりだ。

 ところで貴殿のバスタイムの邪魔をしてしまい、申し訳ない。

 本ブログのおかげで優雅なバスタイムになることを祈っている。