またひとつ、本との出会いの場が消失してしまった。地元の本屋がなくなることのダメージは想像以上に大きい。周辺住民の偏差値や知的好奇心が大幅に下がるくらいのことは起きると思う。本屋で当たり前に見ていた風景も失われることになる。会社帰りのサラリーマン、遊び場のように駆け回る子ども、ラノベコーナーで動かないオタクっぽい人。とくに愛着はなかったはずが、失われることが決まると急に恋しくなる。とうぜん書店員との会話もできなくなる。雑誌を毎月定期購読していてレジで受け取っていた人はどうなるのか。夏休みの宿題の課題図書を買い求める子どもたちはどこで買えばよいのか。愛すべき行き場のない本屋にまつわるタマシイたち。取り残された僕らにできる最後の悪あがきは、少しでもその店で本を買い、もう二度と会えない店員たちとの会話に勤しむことなのだ。