書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

ながら作業は心を置き去りにする

 

何かを実行しつつ、もう一つの何かが終わるのを待っている。効率的で、いっさい時間を無駄にしない完璧な時間の使いかた。二つ以上の同時作業は、心から落ち着くといったことはなく、どこか余裕がない状態に陥る。時間の効率のみを求めているのだから。蓋をあければ結果的に、「時間が短縮された」という結果しか残らない。その虚無感こそがすなわち心の貧しさとなるのだ。

ここで逆説的に思考する。一つのことだけに集中するということは、反対に時間がゆっくり流れるように感じる。体感における問題だ。想像してみると良い。2時間映画を通しで鑑賞すること、2時間動画ゲームSNS等にまばらに興じること。2時間映画を見続けたほうが体感時間が長いと感じるだろうという想像は容易にできる。

さらに言うならば、「ながら作業」は集中力が分散し失敗するリスクがあるが、一つだけにしぼり着実に実行することはそのぶん失敗が少ない。精神が研ぎ澄まされ集中しているためだ。

効率化を求めたらいくらでも時間は短縮できるが、心は満足しない。効率化の先には、新たに生み出された、物質としての時間があるだけだ。ながら作業はときに心を貧しくする。だから私はせめて、情報過多の世の中に、自分の物差しをいつでも見失わないように、今しかできない目の前の一つのことに全力を尽くさねばと思い出すようにしている。