僕のいる部署ではない、おとなりの部署にどうやら新人が入ったらしい。らしい。
背の高い、スポーツ経験のありそうな、強いて言うならバレーボール経験者のような体幹だった。
初めての顔合わせということで、簡単な自己紹介をしてもらうとき。僕のいる部署全員が、仕事の手をとめて、その新人のほうを向いて立ち上がった。
耳をむける。「……じめ…ま……て」 ん?なんて? 言葉でてた? 最初の挨拶でさえ聞き取れない。いやそんな周り誰も電話もしてないし。パソコンのキータップ音なんてたかが知れてるし。
だめ…かな。だめ…なんだろうな。なんか覇気がないんよな。いやそれを言うなら僕だって無いけど。そもそもシャンクスみたいな覇気を出せるのってもはやほぼ仙人だし、だいぶ困難を極めるのだけれど。それにしても、あの子よ。せっかくのファーストコンタクトなのに、第一印象が決定づけられるこの場面で本気ださなきゃ、いつダスの。
で、驚くのはここからよ。その一応の形だけの挨拶のあとに、発言したと思われる「自分の名前」でさえ、聞き取れなかった。
そのあと思わず、となりの席の同僚に新人の名前を再確認したが、その人も僕と同じようにさっぱりという感じであった。
最初なんだから、バカかエリートかくらいの属性は分かりやすく表現してほしかったし、こちらも把握しておきたかった。個人的には、最初はバカを演じておくと、あとあとラクかもなとは思ってる。だが今回の場合、その何もかもが当てはまらない。
第一印象が限りなく「無」や「不明」に近いのである。これからこの新人は苦労するだろう。そして、その周りをとりまく人々も。消極的という美徳と、奥ゆかしさという美徳は全くもってちがう。その人にどういう顔をむけ、どのように話しかけたらいいのか分からないこと。これほど、人間関係を構築するにあたり恐怖はない。
新しい環境に身を置いたときにまず考えねばならないことがある。周りを変えるより、自分を変えるほうが簡単だということだ。ここまで書いてふと我に返る。
人の振り見て、我が振り直せ。
はっ
どんなに人のことを見え透いたようでも、結局全て我が身にかえってくるようだ。
でもさでもさ、いくら若いからといって第一声くらいはちゃんと人の目みて聞こえるようにしゃべろうぜ。
これについては永遠普遍でガチ