書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

サーロインの厚みを聞く人にまともな人はいない

 

病院の待合室で、大きな声でマスクもせず数分間電話し続けるアラサースーツ男性がいた。このご時世に、しかも待合室でうるさい声を轟かせていたものだから周りみんなが怪訝そうな顔をしていた。

 

電話の内容まで聞き入っていた訳ではないので不確かだが、途中まで営業風の要件を話していたはずだった。それがいつの間にやら、電話の切り際に「それじゃあ、サーロインの厚みだけまた教えてください」といって電話を終えた。流石に私は心のなかでツッコミをいれた。

 

偏見だが、サーロインの厚みを聞いてくる奴にまともな奴はいない。そして、それをみずから立証するかのごとく、彼が受付員から会計で呼ばれたとき、「これ、お願いします」と言いながら、お薬手帳を受付員に差し出したのだった。

 

すると受付員は、こちらは隣りの処方箋薬局で出すようにと、きっと内心イラつきながら彼に説明していた。もっともだと私は頷いた。だがそこで彼は「あぁ、でもこちらでやっていただくことはできませんかね?」とさらに食い下がった。

 

どれほどスーツの若い彼が粘ろうが、処方箋を出していない病院でお薬手帳を扱うなど物理的に不可能なので、彼の望みが叶うことは最後までなかった。

 

きっとこの人は職場でも「へんなひと」として強烈に君臨しているのだろう。ともあれ、自分に微塵も関係のない人物に思いを馳せる、それが人間観察。フゥ。これだからたまにする人間観察はやめられない。