一気に読んだ。最後まで。
最後の敵を討つ瞬間。ただひたすら全員の思いで、敵を食い止める。生きている者、亡くなった者、文字通りすべての力を結集させるのだ。
必殺技で最後の敵を倒す、いわゆる少年漫画の定石を打ち崩している。とどめの必殺技など必要ない。必殺技など本物語においては野暮である。名も無きみんなの想いをつなぎとめることが、強固なパワーとなり、どのようなことも必ず成し遂げられるからだ。想いの強さが刃に宿り、強き技になる。どれか一つでもピースが欠けていければ完成しなかった物語。
この世に突如沸いて出た命などない。命があるということ、この世に生を受けているということは、過去から現在に至る命のつながりの中に自分がいるということ。
なぜ炭治郎は、多くの大事なものを失って尚も前を向いて生きていくことができるのか。
それは、今日を明日を今この瞬間を精一杯生きているからである。目の前にたくさんの希望を見出しているからである。恒久的幸せを心の底から願い、現在が幸せであると信じてやまないからである。
授かった御命。その命をつかいきること、まさに天寿をまっとうすることの意味を本作で教わった。
命ある限り、前を向いて生きていく。
それはどんな過去も受入れ、より良い未来を創り出す者の強き心である。
私はこの物語を、一生忘れない。