現状20巻まで読み終わった。二日間でここまできた。スピード感のある作品で、伏線回収を読者が覚えているうちに終えてくれることもあり、ぐいぐい世界観に引き込まれていった。以下、鬼滅の刃が他の漫画とは違う点について述べていく。
禰豆子と主人公炭治郎の絆の強さ
完全な人間じゃなくとも信じて守り通す心の強さ。ただ傍にいるだけでいいのだ。禰豆子が人の言葉を話せないときでも木箱に入り内側から爪でカリカリしたり、戦闘後の炭治郎に抱きついたり。感情表現は言葉である必要はないのだ。
戦闘はチーム戦かつ毎回死闘
特に終盤、柱たちで最強の上弦をタコ殴りにしていくシーンは圧巻であった。それぞれのキャラクターのもつお館様への思いがそうさせた。全員が全力で目の前の敵に立ち向かう、最期まで思いと思いのぶつかり合いだった。さらに戦闘の途中において、敵にまで感情移入させる情景描写は見事としかいいようがない。これほど切ないボス戦は他にない。本作は毎回が死闘かつギリギリの勝利。「努力、友情、勝利」ではない、「努力、友情、満身創痍の勝利」と誰かが評していた。まさにその通りだ。
人間と鬼
鬼は死ぬ間際に生前の記憶が蘇り、最期に悔いのないように成仏され、死んでいく。ただし人間は違う。生きているうちに幾度となく人生に向き合い続けながら、何度でも生まれ変わることができる。少々残酷な言い方をすれば、鬼は死期にしか後悔ができないが、人間は生きているうちに何度も後悔を重ねながらも生き様を修整できる。その点が人間と鬼の最終的な強さの差となったのではないかと思う。
その例外が炭治郎と禰豆子であり、彼らは、人間と鬼が憎しみあうことしかできない世界そのものに風穴を開けた存在であった。どのような世界においても、型にはまった価値観だけが正解ではない。
以上だ。まだコミックスの方は発売されていくが、これからも大事に読んでいきたいと思う。
鬼滅の刃は、少年漫画らしからぬ未曾有のポテンシャルを秘めた、人生の1ページを分厚くしてくれる作品だ。信じ合う絆とは何か、人生において一番大事なものは何かを各キャラクターのリアリティある生き様を通して、切実に思い起こさせてくれる素晴らしいドラマだ。