書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

NHKスペシャル「アマゾン最後の未開人」を観て

 

 

 今、NHKプラスで「NHKスペシャル 大アマゾン」が視聴できる。平成28年に撮影された過去放送分の全4編のプログラム。他シリーズにアマゾンの怪魚、黄金、巨大サルがある。この正月にすべて観終えた私が特に感銘を受けたのが「第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」である。


詳細については以下参照。(NHKのHPより)

 第4集は、文明社会と接触したことがない“原初の人々”を追う。
 アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯にいるという彼らは、部族名も言語も人数もわからない。「隔絶された人々」という意味の『イゾラド』と呼ばれる謎の先住民族である。
 いま、そのイゾラドの目撃情報が相次いでいる。森に猟に入った若者が弓矢で腹を射抜かれた。川辺で遊んでいた少女の足元に数本の矢が飛んできた。イゾラドの集団にとり囲まれた村からSOSが発信された…。
 なぜ彼らは、文明社会の領域に、突如姿を現すようになったのか。取材班は、ペルー政府との交渉の末、イゾラドを監視する複数の最前線基地に、テレビ局として初めて滞在。森の彼方から聞こえてくる、「知られざる、しかし私たちと同じ人間の声」に耳を澄ました。

 
以上


 文明人の集落の青年が、イゾラド達の放つ弓矢により射殺された。こちら側の世界では紛れもない「殺人」である。だがそれはあくまでこちらの枠組みに当てはめた道徳観である。同じ道徳観、倫理観を共有している社会だからこそ成り立つ共通認識なのだ。イゾラドを擁護している訳では決してないが、イゾラドにとっても我が身を守るためにとった行為だったのだろう。これ以上、縄張りを奪われる訳に絶対にいかないと言わんばかりに。


 21分間に及ぶイゾラドとの長い接触に至ることがあった。接触を許されたのはペルー政府より任命された、近くに住む文明集落の男。過去にイゾラドと何度か接触に成功した者だった。そんな彼にNHK取材班が次の質問を託した。


文明人をどう思うか?


幸せとは何か?

 


イゾラドによる回答は以下の通りであった。


文明人をどう思うか?
ー怖い。


幸せとは何か?
ーわからない。

 


このやりとりの数カ月後。イゾラドの家族は「帰る」と言い残し、森の奥へ消えていった。


このときすでに専門家は、イゾラドが生存できるのはあと2〜3年だろうという推測だった。


2021年現在。彼らはどうなったか。その後を知る術は無い。


 近年の都市開発や密猟などにより、彼らの生き場の面積が年々減っていることが報告されていた。ある意味で我々現代人にも責任の一端があるのではないかという考えが頭をよぎった。


 イゾラドによる、文明人100人程が住む集落を壊滅させる事件も当時確認されていた。家屋、家畜、衣服が散乱していた当時の映像がその惨事を物語る。


 だが、我々現代人がおかしていることも、彼らに対する緩やかな壊滅行為なのではないか。人間とは、知らず知らず(無自覚)のうちに、他生物を絶滅へ追い込むことのできる唯一の生物である。だからこそ、危険な力をもち得る我々は、ただただ欲望に身を任せるということをしてはいけないのだ。絶対に。

 

未接触の先住民を目の前にしたときどうする?
放っておいても、壊してもいけない
そもそも答えは本当にその二択だろうか?
別世界にいる私であっても究極の袋小路に入ってしまう


自分の中にある天秤が意味をなさず、むしろ障壁となる。ぜんぶひっくり返されて、グチャグチャにかき回される感覚だ。


アマゾンの奥地にて、彼らは無事に生き延びてくれているだろうか。地球の裏側から、どうしようもない焦りを抑えることしかできない私であった。