書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

だれかに親切すると気持ちいい

 

 ふだんから仕事中でもプライベートでも、人知れず床に落ちているゴミを拾ったりはしていた。しかしそれはある種の自己満足であった。だれかに感謝されるわけではなく、まただれかに感謝されたいと望んでもいなかった。

 

 だけど今日のラーメン屋でそれは見事に打ち砕かれた。明確に「だれかに感謝される親切」をしてみた。それはほんとうに久しぶりでどこか懐かしい感じすらした。

 

 

 入店して、一番入口に近い席に座った。そこは長めのカウンターで団体客が座るための座席でもあった。もちろん最初その席に実際に座っていたのは全員一人客であった。しかし、後続の二人組の男性客が暖簾から顔を覗かせながら、店内を確認していた。それを察知した店主は、席が離れてしまうが一人ずつなら座れる旨を説明していた。

 

 私はそれに気づき、なんだか背中がむずかゆい気持ちになりながら、スッと隣りの短いカウンターのレーンに席を移動した。それを察知した店主が、湯切り中のラーメンを一旦保留にしてまで、こちらに顔を向けてお礼を言ってくれた。どうも、すみませんね。ありがとうございます。

 

その温かい言葉は、一日中耳に残った。

やはり明確な親切は格別だ。

そう思った一日であった。

そして、ほんの気持ち程度、ラーメンに入るチャーシューの量が多かったように思う。

私は、これも親切のおまけだと思い、ひとくちひとくちいつもより噛み締めながらすぐに一杯を平らげたのだった。