書くザトウクジラ

人類の幸せから、仕事の愚痴まで。

有吉にみた「言葉をとっておける人の強み」について

 

金曜放送の『マツコ有吉のかりそめ天国』は私の好きな番組の一つだ。

おととい金曜日に放送されたのはスペシャル回で、後半部分が『マツコ有吉の怒り心党』が一夜限りの10年ぶり復活ということだった。有吉と夏目三久アナが結婚したというニュースは記憶に新しい。さて早速、本題である本記事タイトルの真意について触れていく。もともと有吉は、面白さに加え、巧みな話術、さらにはIPPONグランプリでも優勝経験のあるマルチな才能が光る唯一無二の存在だ。その有吉の凄みを今回の放送で再び思い知ることとなったのだ。それは有吉がマツコへ放った重みある次の一言だった。


有吉「マツコさんのこと、お笑いコンビの相方だと思っていますから」


ピンのお笑い芸人が生む言葉の中では最大級の賛辞だ。これに対しマツコは、3秒半程ためて薄目で天を仰ぎながら「それはふつうにうれしい。。」と感慨深い様子であった。

この有吉の発言は脈略なしにポッと出てきたわけではない。かりそめ天国の前身である「怒り心党」からもう10年経ったよね〜という内輪話からの派生の中でごく自然に有吉の口から溢れたものであった。さらに彼の人間味を象徴するかのように、その発言がよほど恥ずかしかったのか発言後すぐさま照れ隠しの毒を吐いている。

 


そしてもう一つ感動したことがあるのでつけ加えると、この特番がエンディングに差しかかるとき、かりそめ天国の久保田アナから夏目アナへお祝いの花束の贈呈があった。そんなサプライズに夏目アナは、「久保田さんはアナウンサースクールの頃から講師をやっていただいていて、その頃からすごく懸命にアナウンサー業に向き合ってこられていて今でも憧れの素晴らしい先輩です」というようにとっさのサプライズにも、ごく自然に相手に対し顔を立てられることに私は感動を覚えた。それはアナウンサーとしての自然な所作というより、彼女のもつ人間性がそうさせたのだという感があった。

実は私が一番注目したのは、この次に夏目アナが放った番組の締めくくりの言葉だ。


「このような帰って来られる場があるのも、皆様が番組を10年間続けてくださったお陰だと思います。皆様これからも末永くよろしくお願いいたします」


一言一句これと全く同じという訳ではないが、このようなことを発言されていた。私はもれなく感動した。これほどまでに「今の私たちがいるのは皆様のお陰です」ということを美しくかつ簡潔に言い表した言葉はないと思った。言葉そのものをそのまま言わないところもすごくイイ。とくに「帰ってこられる場」というワードチョイス。これから大事な場面でむしろ自分がマネして使いたいと思うほどだ。

加えてベテランアナウンサーとしての流暢な言い方と抑揚のつけ方も合わされば誰の記憶にも残るに違いない。これを訊いたスタッフ、演者、視聴者だれもが悪い気はしないだろう。それも、とくにこのいろいろと燃えやすいご時世においては奇跡に近いことなのだ。


すべてを面白くする有吉の解放力
すべてを包みこむ夏目アナの包容力


とてもいい絶妙なバランスで、まさに二人でひとつの改めて最高の組合せだと思う。
本当におふたりには幸せになってほしいな。

 


大事な節目まで言葉をちゃんと取っておける大人ってかっけえというお話でした。有吉が今回マツコに放った温かい言葉は、特別な場面だからこそ何倍にも光るのだ。有吉はお笑い芸人であるけれども、同時に言葉使いの達人であることも感じさせられました。言葉の達人は、人を喜ばせる天才でもあるのだ。

 


p.s.
マツコと有吉、10年以上のつきあいなのに連絡先も知らず、お互いに○○さん付けで呼び合うのなんか好き。長くつきあうにはベッタリも悪くないけど、互いにとって良い距離感を保ち続けるのが一番の秘訣なのかも。だから第三者である視聴者が観ててもいつまでも飽きないし、居心地が良いのだろう。