(2020年3月発行)
タイトル:空気を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる
著者:鴻上尚史
世間体とは?空気を読め〜の空気とは?
独特の文化をもつ日本の不思議さとともに分かりやすく語られていたので読んでみました。無意識に空気を読んでしまう習性をもつ日本人必見の書です。
本書で気になった点を簡単にまとめています。
海外から見た日本文化の違和感
・後輩が奴隷のように この国の文化?
空気を読むこと、年長を立たせること。学生時代の部活動の頃には既にあった上下関係。外国人留学生が言った。どうして日本では部室の掃除を後輩がしていて、先輩の言ったことは絶対なの?「まるで奴隷のようね」海外では珍しい光景のようだ。
・アメリカ人は嫌なことは「嫌」とはっきり言う
ー嫌なことを嫌といって何が悪いんですか?
日本人なら、近い存在の人からの頼みごとならつい引き受けてしまう。とりあえず引き受けて、後から後悔することもあるだろう。
アメリカ人は違うらしい。嫌なこと、できないことはその場でNOと答えるらしい。しかも笑顔で。思わず、その場に居合わせた日本人は訊いてみた。なんでそんな笑顔で断っているの?
「だって、嫌なことを嫌と言うってふつうのことでしょう?」
これを異常と感じてしまう日本人の感覚のほうが、異常なのかもしれない。
・sister、brotherと区別つけない。日本では大問題。どうしても区別つけるときだけ頭にyoung 、oldをつける。海外ではまったく重要視されない年齢。
日本にとっては兄なのか弟なのか、姉なのか妹なのかは大問題である。日常会話で無意識に確認もしているだろう。
だが、sistarは「姉、妹」であり、brotherは「兄、弟」のどちらの意味ももつ。いかにどちらが年上で年下で…という論議が不要かということが分かる。
思えば、日本の芸能人等の年齢が必ず表示されるのも不思議なことだ。
年上に従うことはある意味で、とても楽だ。だがこれからの時代それではいけないだろう。できることとはYESと言うのはもちろんのこと、できないこともNOと言おう。
それがぎこちないうちは、所詮その程度の関係性と言えるのかもしれない。
「空気」を読んでも従わない: 生き苦しさからラクになる (岩波ジュニア新書)
「世間」が理解できない外国人
・世間というのは、あなたと、現在または将来、関係のある人たちのこと。世間の反対語は社会。社会とは、あなたと現在または将来、なんの関係もない人たちのこと。日本人は基本的に世間に生きている。自分に関係のある人たちをとても大切にする。
やたらと世間体を気にする日本人。「世間様に顔向けできない」「世間に迷惑をかけて…」未だにこういった言い回しは根強く残っている。
・外国に「世間」はない。ドイツ人店長にきた客に対して、店員が土下座しようとしたところ、料金を返金するので帰ってください、あなたはお客じゃないと一喝した。
赤の他人であるクレーマーがいると、どうしても他人事と思えないのが日本人である。自分ごととして向き合おうとする。社会が突如、世間という近いものになった瞬間である。社会の人間がいきなり、世間のように距離が近くなる稀有な現象と筆者は述べている。
その点、上記ドイツ人店長の対応は、傍から見れば気分がいいものである。
「あの人にどう思われているか」
「あの人に嫌な人と思われたくない」という感情が生じる相手というのは、自分と同じいわゆる「世間」の人ということになるらしい。赤の他人からの評価など、多くの人がどうでもいいというように。
社会と世間。本書ではまったく対極にある概念として、表記されている。
同じ世間の人と肩がぶつかったら(相手に嫌われないように)すぐさま謝罪するが、赤の他人である社会の人と肩がぶつかっても基本的にスルーするだろう。
「世間が存在せず、すべて平等な社会」という共通認識をもっている諸外国は、全員に同じように振る舞うのだろう。相手によって立ち居振る舞いを変える日本人の、なんと器用なことか。
いや、自分のことか。